前年度の研究からCj1496cはその分子内の2カ所のアズンパラギン残基が糖鎖修飾を受けていることが明らかとなった。本年度はsite-directed mutagenesisにより作製した、糖鎖付加部位に変異を持つcj1496cをcj1496c欠損株で発現するためにプラスミドで変異遺伝子を導入し、腸管上皮細胞内への侵入性とニワトリ雛の盲腸での定着性を野生株と比較した。その結果、糖鎖のないCj1496cを発現する株の細胞侵入率と腸管定着率は野生株と同程度であった。プラスミドはCampylobacter内でマルチコピーで維持されることが解っていたため、発現するCj1496cの量が通常と比較して増加し、そのことにより糖鎖付加の無いCj1496cの細菌内での安定性等への影響をマスクしている可能性が考えられたため、染色体上に変異遺伝子を組み込んだ株を作製し、同様にその表現型を野生株と比較したところ、染色体変異株もまた野生株同様の細胞侵入性と腸管定着性を示した。以上の結果から、Cj1496cは糖蛋白として菌内で発現されるものの、その糖鎖はCj1496c蛋白の機能に明瞭な関与を示さないことが明らかとなった。このような現象は真核細胞で発現する糖蛋白ではよく知られていたが、原核生物でも同様であることは興味深い。 Cj1496cの局在を調べるために細菌を細胞質、膜、ペリプラズムのそれぞれの分画に分けウエスタンブロット解析を行ったところ、Cj1497cはペリプラズムに局在する蛋白であると考えられた。従って、Cj1497c変異株の表現型はCj1497c自体によるものというよりは他の蛋白を介した間接的な影響を見ている可能性が考えられた。最終年度は、他の糖蛋白に関しても同様の解析を行っていく予定である。
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