研究課題
北海道のエキノコックス症は、住民の健康への脅威となっている。エキノコックス症における媒介動物対策は、その重要性にもかかわらず、実験実施者に感染の危険を伴うため、十分に検討されているとはいえない。我々は新たなエキノコックス対策法を構築するために、北海道立衛生研究所の特殊感染実験施設を用いて、本研究を開始した。初年度に、実験的に感染させたイヌから得た成虫を用いて作製した多包条虫成虫のcDNAライブラリーの中から、これまで報告のない新規のシグナル配列を持つ分泌・膜結合型のタンパク質をコードする遺伝子emY162を発見し、その構造を明らかにした。また感染イヌ血清中にこのタンパク質に対する抗体が誘導されることを認めた。本年度は、この遺伝子の有用性をさらに検討するため、実験的な検討を加えた。まず多包条虫虫卵をコトンラットに投与し、肝臓に形成された幼虫から抽出したmRNAを用いたRT-PCR解析を行い、この遺伝子が、成虫のみならず幼虫ステージにおいても発現していることを明らかにした。また、組換え蛋白を作製、BALB/cマウスに免疫し、イヌへの実験感染により得られた多包条虫の虫卵をこれらの免疫マウスへ感染させたところ、74.2%の感染抑制を認めた。これらの検証により、本遺伝子によって産生されるタンパク質が、人を含む中間宿主に対するワクチン効果があることを確認した。また、これらの実験結果は2報の学術論文および2報の学会発表として公表した。最終年度はさらにこの新規抗原の有用性を明らかにするとともに、新たなクローンについても解析を行う予定である。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Biochim Biophys Acta. 1780
ページ: 1-6
Biochem Biophys Res Commun. 363
ページ: 915-920