判定に数日を要する従来の培養法に比べ、迅速にready-to-eat野菜及び果物から汚染総菌数を定量できる新しいリアルタイムPCR法を開発することを目的とした。プライマーの設計に当たり、菌種間でコピー数などに違いがある16S rRNAに代わり、ほぼ全ての細菌に普遍的なRNAポリメラーゼのβサブユニットをコードするRpo B遺伝子を選択した。また、経済性のあるSYBR Green色素を用いることとした。その結果、幅広い菌種においてrpoB遺伝子を特異的に増幅する系を作製した。次に、市販の野菜及び果物を購入し、開発されたリアルタイムPCR法にて汚染菌を検出すると同時に、その結果を培養法で確認された菌数と比較し、培養法による菌数と検出PCRサイクル数に相関が見られるか確認することを目的とした。34種のready-to-eat野菜及び果物の培養法による生菌数は3.6〜8.6 log cfu/gだった。培養法による生菌数とリアルタイムPCR解析によるCt値で検量線を作成したところ、培養法による生菌数とCt値との相関は高かった。検量線の式はy=-2.99 log(x)+42.07であり、R^2は0.90であった。しかし、いくつかの検体では、培養法による生菌数とリアルタイムPCR解析での菌数に1 logのずれが見られた。これはサンプル中に存在する菌種の培養能力またはサンプルからのDNA抽出の影響によるものであると考えられる。しかし、迅速、単純、そして効果的なリアルタイムPCR法が開発され、全てのサンプルにおいて完璧ではないが、特に4〜7logの一般生菌数の定量において十分に使用できると考えられた。
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