研究課題/領域番号 |
18580317
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中市 統三 山口大学, 農学部, 教授 (60243630)
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研究分担者 |
奥田 優 山口大学, 農学部, 准教授 (10325243)
田浦 保穂 山口大学, 農学部, 教授 (80163153)
宇根 智 山口大学, 農学部, 准教授 (60294659)
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キーワード | 癌 / 肥満細胞腫 / 薬剤耐 / P糖蛋白 / MDR1 / 臨床 / 獣医学 |
研究概要 |
山口大学附属動物医療センターに来院した犬の自然発生肥満細胞腫を対象として、変異c-kitを介した細胞増殖に抑制効果を持つメシル酸イマチニブの臨床的治療効果を検討した。次いで本剤を含む化学療法の薬剤耐性に関与していると考えられるMOR1(Multidrug Resistance)の発現を、犬の肥満細胞腫27症例を対象として検討した。 その結果、本剤の臨床例に対する投与により、2症例で著しい腫瘍の縮小効果が認められ、しかも副作用は非常に軽微であった。しかしこれらの2症例では、ともに治療開始から約6カ月後に腫瘍組織の再増殖が認められ、その治療効果が著しく減弱した。以上のことから肥満細胞腫に対する化学療法においても、造血器系腫瘍と同様に何らかの薬剤耐性が発現している可能性が示唆された。次に自然発症肥満細胞腫から採取した腫瘍組織において、MDR1の発現をRT-PCRによって評価した。その結果、27例中18例でMDR1の発現が確認された。 以上の検討結果より、犬の肥満細胞腫の中には分子標的薬であるメシル酸イマチニブを用いた治療が、臨床的に有効である症例が含まれていることが判明した。しかしながらその効果は永続的なものではなく、何らかの薬剤耐性が関与している可能性が考えられ、腫瘍組織の再増殖が引き起こされているものと思われた。さらに臨床例を用いた検討において、MDR1を発現した肥満細胞腫が潜在的に多数存在している可能性が示されたことから、今回臨床例で観察された薬剤の効果の減弱にはMDR1を介した薬剤耐性の関与が示唆された。したがって今後は、MDR1/P-gpの発現と臨床例における実際の化学療法に対する反応性との関連について、追加検討が必要であると考えられる。
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