研究概要 |
(1)健常イヌにおける20%マンニトール(MAN)、7.2%高張食塩液(HSS)およびデキストラン加7.2%高張食塩液(HSD)の脳内血管断面積におよぼす影響 磁気共鳴装置(MRI)を用いて、非観血的に少量ボーラス投与(5mL/kg、全量を15分、IV)によるMAN、HSSおよびHSDの脳血液循環におよぼす生理学的作用を比較検討した。なお、対照薬剤は生理食塩液(ISS)とした。その結果、上矢状静脈断面積は、HSD投与終了後に2.09±0.25倍まで拡張し、この拡張は他群のそれよりも有意に高値を示した。また、小脳辺縁部垂直断面像において、脊髄周囲の脊髄液量を示す高信号領域(CSF領域)は、MAN投与群よりもHSD投与群で有意に減少した。以上の結果から、HSDはMANよりも迅速かつ強力に脳脊髄液量を減少させること、そして血管断面積を著しく拡張させることから、脳浮腫または脳循環の改善薬として評価する価値が高いと思われた。 (2)健常イヌにおけるHSSおよびHSDの心収縮力におよぼす影響 HSSおよびHSDの心収縮力におよぼす影響を超音波画像診断装置を用いて評価した。HSS投与直後から心拍数、一回拍出量および神経数は有意に増加した。しかし、左室拡張末期容積の有意な増加が認められたが、左室収縮末期容積の有意な変化は認められなかったことから、HSSは直接的に心収縮力を増加させるのではなく、前負荷の増大に伴い心係数が増加することが確認された(Suzuki K., J.Vet.Med.Sci., 68.749-751)。 先の研究では、一次元的なM-mode法のみで心機能を評価しているため、より精度の高い二次元的なSimpson法を用いて再度、HSSの心機能におよぼす影響を評価した。また、対象薬剤としてHSDを加えて評価した。HSSおよびHSDは先の研究と同様に前負荷の上昇と後負荷の減少が認められ、その程度はHSDで著しく大きかった。これは循環血漿量の増加量がHSSのそれよりもHSDで有意に大きく、また持続的であったことが要因と考えられた。
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