【目的】本研究では血液量減少モデルを用いてイヌの脳血液循環に対する6%デキストラン70加7.2%高張食塩液(HSD)の効果について上矢状静脈断面積、血流量および血流速度を指標にマンニトールと比較検討した。 【材料および方法】イソフルラン吸入麻酔下で健常ビーグル犬(n=6/群)から30mL/kgの血液を大腿股動脈より30分間で採取し血液量減少モデルを作出した。その15分後に5mL/kgのHSDまたはマンニトールを20mL/kg/hの投与速度で静脈内投与し、脱血開始時(pre)、輸液剤投与開始直前(base)、投与開始後5、10、15、30、45、60、75、および90分目に磁気共鳴装置(MRI)を用いて下垂体垂直断面軸位像を撮像し、上矢状静脈断面積を求めた。また同部位においてPS法(PhaseShift)を用いて上矢状静脈血流速度および血流量を計測した。またpre値に対する各時点の循環血漿量の変化量(rPV)を算出した。 【結果】HSD群のrPVは、マンニトール群の127.02±9.65%に対して投与終了時に154.07±17.89%を最高値とする有意な増加を示した(p<0.01).HSD群の上矢状静脈血流速度は投与終了時にpre値の2.07±0.09倍の最高値を示し、これはマンニトール群の1.83±0.22倍と比べて有意に高値を示した(p<0.01).同様に、HSD群の上矢状静脈血流量はマンニトール群の1.69±0.22倍に対して、投与終了時に1.91±0.09倍を最高値とする有意な増加を示した(p<0.0l)。 【結語】HSDは20%マンニトールと比較して有意に上矢状静脈断面積を拡張させると同時に、上矢状静脈血流速度を増加させ、上矢状静脈血流量も増加させた。以上のことから、ショック時における脳血液循環不全の改善には20%マンニトールよりもHSDの方が有効であることが示唆された。
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