研究概要 |
目的:感染早期の感染様相に注目し、犬糸状虫Dirofilaria immitisを定量感染させた犬の感染早期の抗体保有性状の解析を目的とした。 材料および方法:犬糸状虫のmf陽性犬に吸血させたトウゴウヤブカから回収した感染幼虫(L3)を5頭のビーグル犬(雄)に100虫ずつ皮下に注入し,経時的に採血した血清を用いて抗体価の推移を206日後まで観察した。抗体価は,犬糸状虫の雌雄成虫抗原をそれぞれ固相化したマイクロプレートを用い,IgG1,IgG2,IgA,IgE,IgMの各抗体クラス(サブクラス)についてELISA法で観察した。設備費で購入したELISAシステムは本研究および関連研究において期待通りの能力を発揮した。 成績および考察:剖検の結果,平均36.4(47〜29)匹の感染が確認された。成虫抽出抗原に対する抗体価を抗体クラス別に検討した結果,IgG1,IgG2,IgM抗体は感染20日後から陽転した。一方,IgAとIgE抗体はともに感染60日後まで陽転しなかった。雌雄の抗原間の比較では、IgG1は雄抗原に対して、IgG2は雌抗原に対して高い傾向を示した。また、IgG2は全体に他のクラスの抗体よりも高値を示した。IgGサブクラスの推移では、IgG2が早期に上昇し、その後にIgG1が上昇した。 以上の様に、抗体クラス別に抗体価の推移を検討した結果、抗体クラスによって陽転時期が異なることが分かった。虫体が皮下織から血管系に移動する時期である感染60日後にIgG1とIgG2の両者において抗体価の明瞭な低下が認められ、この時期からIgEとIgA抗体が陽転したことは抗原刺激が異なったことを示唆するものと考える。
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