研究概要 |
アディポネクチンは脂肪細胞で産生されるアディポカインの一つで、ヒトでは肥満すると血中濃度が低下し、糖尿病の発症に関与する事が知られている。ネコの糖尿病はヒトの2型糖尿病に類似し、同様にアディポネクチンの関与が推察される。 平成18年度は分子レベルの解析を行い、遺伝子のクローニングやELISAによる測定系の検討を行った。猫の脂肪組織を材料にしてRT-PCR法によるアディポネクチンのcDNAクローニングを行い、ネコアディポネクチンが他種の物と高い相同性を持つことを明らかにした。骨格筋からクローニングしたネコアディポネクチン受容体1型(AD-R1)の細胞外ドメインはヒトの物と100%一致し、分子標的としてヒトのモデルになる可能性が示された。アディポネクチンのmRNAは脂肪組織に限局的に発現しており、AD-R1は多くの臓器に広く発現していた。次にポリクローナル抗体を用いたマウス/ラット用のアディポネクチンELISAキットを用いて様々な条件検討を行ったところ、この測定計が猫のアディポネクチンを測定するのに適していることが明らかになった。 平成19年度は個体レベルの解析を行い、肥満猫や糖尿病猫での血中動態について検討した。日本獣医生命科学大学動物医療センターに来院した患者猫24頭について肥満度(5段階ボディコンディションスコア,BCS)と血中アディポネクチン濃度の関係について解析したところ、肥満度の高い症例で血中アディポネクチン濃度はより低値を示した。また、糖尿病で治療中の2頭について調べたところ、アディポネクチンがフルクトサミンと逆の動態を示す可能性が示された。
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