日本の麹菌醸造産業は、固体醗酵による大規模な高分子分解・変換産業である。我々は、麹菌による生分解性プラスチック(生プラ)の大規模分解リサイクル技術の開発過程でプラスチック分解に関わる固液界面の新規酵素反応機構を発見した。麹菌が生プラ分解時に分泌する界面活性蛋白質ハイドロフォビンRolAは、疎水固体表面に結合して構造が変化した後に酵素クチナーゼCutL1を界面にリクルートして生プラ分解を促進しており、界面での構造が反応に重要である。本反応は糸状菌の感染から固体醗酵にまで関わる基幹的な固浪界面反応である。またRolA疎水固体表面に吸着した状態で、水平方向への可動性という新規の物理化学的性質を示す。本申請では、(1)RolAの固体表面への吸着部位と水平方向可動性を調べること、(2)RolAとCutL1の相互作用部位の探索と、を目的としている。本年度は(1)に関して研究を進めた。 RolAのアミノ酸一次配列から、疎水性のアミノ酸の集中している領域を選択して、疎水性アミノ酸から親水性アミノ酸への置換変異を行ったところ、テフロンなどの疎水面への吸着能の低下した変異体が得られた。さらにROlAを6分割したペプタイドを合成し、RolAがテフロンに吸着する際に、ペプチド共存下の阻害解析を行ったところ、吸着能の低下した変異部位を含むペプチドがRolAのテフロンへの吸着を阻害したことから、その領域がRolAの疎水面との相互作用部位であることが推定された。今後、FRAP法にて、変異体の疎水表面上での水平可動性の解析を行う予定である。また次年度は、(2)の解析を進める。
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