研究概要 |
1.河床堆積物中に含まれる植物種子の調査 河床から採取した土砂とデブリ(有機堆積物)をもちいて発芽実験をおこない,堆積物中に含まれる種子を調べた.土砂やデブリ中からは多数の実生が発芽し,河床に先駆的に形成される植物群落の構成種も含まれていた.このことから,土砂やデブリ等の堆積物とともに植物の種子が運搬・堆積していることが確かめられた. 2.河床堆積物上に成立する植物群落の調査 増水により新しく供給された堆積物上に発生する実生を調査した結果,その種組成は土砂の粒径組成と対応関係があり,特に細粒の堆積物が卓越する場所に偏って出現する植物が多かった.群落形成の初期段階から,堆積物粒径によって種組成に違いがあることから,土砂の堆積と同時に種子のふるい分けが生じている可能性が示唆された. 3.種子の形態・重量および沈降速度 発芽実験によって出現した種を中心に,河床植物群落の構成種の種子の大きさ,重量,水中での沈降速度を測定した.デブリの試料から発芽した植物の種子は,浮遊性が高く,何らかの付属体をもつものが多かった.土砂の試料から発芽したものは,径0.5〜1.0mm程度の砂と同程度の沈降速度をもつものが多かった.また,実際の河床で細粒の堆積物上に偏って出現する植物の種子は,砂と同程度の沈降速度をもつものであった. 以上の結果から,河床の堆積物中に含まれる種子の組成は,種子の特性と関連して堆積物の種類や粒径で異なっており,土砂管理方法の変更により河床に供給される堆積物が変化すると,河床植生に大きな変化をもたらす可能性が高いことが明らかになった.
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