原始的な神経系しか持たないクラゲの浮遊挙動を解明するとともに、ソフトな刺激により制御することを検討した。これによりミズクラゲの大量発生に伴う火力発電所や船舶における冷却用取水トラブルの解消、あるいはクラゲによる漁業被害の低減のための技術開発を目的とした。 1.飼育環境の整備とミズクラゲの自動追尾計測システムによる光や電圧、超音波などの影響評価 飼育水槽の整備や給餌法などの改良を行い、水温・水流、塩分濃度、アンモニアや亜硝酸の濃度等に配慮してミズクラゲのライフサイクルの観察、継続的飼育に適した飼育環境を整備した。ミズクラゲの浮遊挙動の時系列データを得る目的で、光散乱や超音波散乱測定を試みた。また、電気刺激以外に超音波、可視光などを水槽内のミズクラゲに照射し、刺激信号の変調や刺激の有無に対する浮遊挙動の変化を生物個体重心の変位として記録、解析した。 2.ビデオ画像を用いるクラゲ浮遊挙動の解析 ビデオ撮影した動画像データからミズクラゲの断面形状を2値化し、断面形状の形態変化、断面積の時間変化から拍動挙動および浮遊挙動の時系列データを得た。これにより各種刺激に対するクラゲの拍動強度の変化や浮遊姿勢、遊泳方向などについてより詳細に検討できることが明らかになった。 3.ミズクラゲの浮遊挙動に及ぼす光照射の影響評価 各種・各色の光源を用いて光刺激の強弱や有無あるいは変調光照射に対するミズクラゲの拍動や浮遊挙動の変化を検討した。一定時間の拍動数平均値に注目した先行研究とは異なり、光のONあるいはOFF直後の過渡的な拍動数変化に影響が現れること、また刺激条件により一定時間後に拍動数が元のレベルに戻り光馴化が起こることが示唆された。
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