研究概要 |
内分泌撹乱物質による生態系への影響が大きな問題となっているが、内分泌撹乱物質としては、合成された物質だけでなく天然に存在するホルモンあるいはホルモン様物質の影響が無視できないことがわかってきた。そこで、牛糞尿廃水を例にとって天然ホルモンを完全に分解除去できる処理プロセスの検討を行った。特に、これまで研究が十分には行われていなかった生物学的処理プロセスにおける天然ホルモンの分解挙動を明らかにすることを目的とした。 牛糞尿は熊本県の畜産農家から提供されたものを使用した。処理プロセスとしては、嫌気性処理(高温メタン発酵)→希釈→好気性処理(活性汚泥法)の順に生物学的処理を行い、次にオゾンを用いた物理化学的処理を行う処理プロセスを構築した。高温メタン発酵には実容積8Lの機械撹枠型発酵槽を使用し、温度を56℃に制御した。活性汚泥槽には実容積1.1Lのアクリル製リアクターを使用し、温度30℃、通気量110mL/minの条件で好気処理した。牛糞尿中に含む天然ホルモン物質であるエストロゲン活性の検出に酵母two-hybrid法を用いて17β-エストラジオール換算値として示した。使用した牛糞尿排水のBOD_5,TOC, COD_<Cr>,SS, total VFAの濃度はそれぞれ27,600mg/L,9,470mg/L,25,800mg/L,58.6g/L,12,700mg/Lと高い濃度であった。また、環境ホルモン様活性は200-900mg/L(3.3-14.8mg/g dry weight)であった。TS負荷4g/L/dにおける高温メタン発酵では、処理水中のTOCおよびVSS濃度はほぼ一定に保たれ、有機酸濃度は約300mg/Lであった。このときのガス発生量は8,000ml/L/d、メタン含量は約60%であった。また、平均的な環境ホルモン様活性の除去率は80%であった。このようにして得られた嫌気性処理水を水道水で4倍希釈し、好気性処理を行った。その結果、total-VFA, BOD_5,COD_<Cr>,TOC, TS, VSSをそれぞれ99.7%,90%,79%,84%,48%,60%にまで削減することができた。環境ホルモン様活性も40-100mg/Lまで低下させることができたが、完全には除去できなかったので、オゾン酸化処理を行った。その結果、環境ホルモン様活性を検出限界以下に低減できた。 以上、天然ホルモンの嫌気および好気的生物処理とオゾン酸化を組み合わせた処理プロセスを研究・開発した。
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