天然ホルモンの代表的な化合物として17β-エストラジオール(E2)を含むモデル家畜糞尿廃水の嫌気処理を行った。供給液のTOC濃度8g/l、希釈率0.05d^<-1>の条件では、供給したE2(100μg/l)の90%以上がなくなり、E2供給開始とともにE2よりも弱いエストロゲン活性をもつエストロン(E1)が約60μg/lまで増加した。したがって、嫌気条件でE2は微生物によりエストロン(E1)に酸化されることが示唆された。E2がE1に酸化された結果、酵母Two-Hybrid法によるエストロゲン様活性は約60%減少した。一方、GC/MS法による中間代謝産物の測定では、E1以外に17α-エストラジオールが約1μg/l検出された。供給されたE2に対して当量の代謝産物が生成されていないことから、E1以外の他の中間代謝産物も存在すると考えられた。共代謝によりE1の分解率をさらに高くすることを目的として供給液中に酪酸を共存させ酪酸の添加濃度を変化させて検討したが、供給液の酪酸濃度の増加に伴いE1の蓄積量も増加し、完全分解は起こらなかった。 供給液のTOC濃度8g/l、希釈率0.05d^<-1>の条件でのメタン発酵槽内の真正細菌(Bacteria)を対象として16SrRNA遺伝子に基づく系統解析を行なった結果、Proteobacteria門とFirmicutes門に近縁な微生物が優占であることがわかった。 また、嫌気処理液を用いて好気処理の検討を行った結果、嫌気条件では分解できなかったE1が完全に分解できた。この好気処理リアクターからE1を分解する株を単離した。
|