研究概要 |
1)糸状菌Penicillum citrinumが産生するキシラナーゼXynBに関する研究 カンバ材由来キシランを唯一の炭素源とした液体培地でP. citrinumを30℃、3日間回転振とう培養した。培養液上清より各種クロマトグラフィーを用いて、分子量31.6kDaのXynBを電気泳動的に単一に精製した。酵素活性の最適pHおよび温度は、それぞれ6.0および50℃であった。pH安定性は3.0-10.0、温度安定性は40℃まで認められた。また、XynBはキシロビオースには作用せず、それ以上の重合度を持つものに作用したことからエンド-1,4-β-キシラナーゼであることがわかった。遺伝子クローニングの結果、xynBのORFは、9箇所のイントロンを含む、アミノ酸25残基からなるプレプロ分泌シグナルと302残基からなる推定分子量32,637Daの成熟酵素をコードした。XynBの推定アミノ酸配列は、近縁のPenicillium simplicissimum由来のキシラナーゼXynAと高い相同性(90%)を示した。 2)糸状菌Asperjillus japonicusが産生するβ-キシロシダーゼXylAに関する研究 カラス麦製キシランを炭素源としたA. japonicusの培養上清より、各種クロマトグラフィーを用いて分子量113kDaのXylAを電気泳動的に単一に精製した。N-グリコシダーゼF処理により、その分子量は、82.0kDaに低下した。遺伝子クローニングの結果、xylAのORFは、イントロンを含まない2412bpから成り、17アミノ酸残基の分泌シグナルと787アミノ酸残基の成熟酵素(推定分子量84,637Da)をコードした。XylAには17箇所のN型糖鎖付加のためのコンセンサス配列、5'非コード領域には、5箇所のカタボライト抑制因子CreA結合可能部位や2箇所の転写誘導因子XlnR結合可能部位が存在した。XylAはAspergillus fumigatus由来のβ-キシロシダーゼXylAと最も高い相同性(69%)を示し、糖質加水分解酵素ファミリー3に属することが分かった。
|