食品加工場やスーパー等から排出される食用廃油は年間約100万トンと推定され、その大部分は下水等へ廃棄されるか生ゴミとして焼却されている。これら大量に廃棄される食用廃油に含まれる脂肪酸を脱カルボニル化して炭化水素に変換するバイオプロセスが開発されたならば、石油に代わる新しいエネルギー源としての利用と石油化学製品への原料としての供給が期待できるため、脂肪酸を炭化水素に変換する微生物酵素の探索を行った。 具体的には、廃油に多く含まれる炭素数18の脂肪酸のアルコールであるオクタデカノール(CH_3(CH_2)_<16>CH_2OH)を化学的に酸化してオクタデカナール(CH_3(CH_2)_<16>CH O)を合成し、これを脱カルボニル化してヘプタデカン(CH_3(CH_2)_<15>CH_2)に変換する微生物、または、逆にヘプタデカンをオクタデカナールに変換する微生物を探索した。化学合成したオクタデカナールを唯一炭素源とする培地で微生物を集積培養し、土壌から分離した約1000株について、ヘプタデカンまたはオクタデカナールが生成されているか、薄層クロマトグラフィーにより検討した。ヘプタデカンまたはオクタデカナールと思われる物質を生成している細菌を、各々17株と9株分離できた。次に、変換物質を標準物質であるヘプタデカンおよびオクタデカナールとガスクロマトグラフィー分析により比較したところ、細菌の関与がなくても標準物質と同じ位置にピークが検出され、変換物が微生物の関与によるものか、基質の分解によるものか検討が必要になった。今後は、脱カルボニル化酵素をもつ微生物の探索を継続すると共に、ガスクロで検出された物質について詳細な検討を行う。
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