緑藻Botryococcus brauniiは、菌体内に炭化水素を蓄積することが報告されている。これは緑藻に含まれる短鎖脂肪酸を長鎖脂肪酸アルデヒドに変換した後、脱カルボニル化して炭化水素に変換する複数の酵素の働きによるものと考えられている。一方、食品加工工場等から年間約100万トンの食用廃油が排出され、その有効利用が検討されている。そこで、油脂に含まれる脂肪酸を炭化水素に変換するため、脂肪酸を化学的に還元した脂肪酸アルデヒドを基質とし、これを脱カルボニル化する微生物酵素の探索を行った。 これまでの探索から、脂肪酸アルデヒドであるオークタデカナールを脱カルボニル化して炭化水素であるヘプタデカンに変換すると思われる細菌7株を得ている。7株の中で変換活性の高かったNo.286株について、培養条件を検討した。変換酵素の存在量が少ないため、フラスコ培養した菌体を集めて、培養時の十倍量の菌体とオクタデカナールを反応させてヘプタデカンの生成を検討した。分析は反応液からベンゼン抽出した画分について、ガスクロマトグラフィーによりヘプタデカの標準物質と溶出時間を比較検討した。反応時間を変えて生成するヘプタデカンの量を分析したところ、反応5日目から増加して9日目に最大の変換量に達した。今後は、機器分析により変換した物質がヘプタデカンであることを確認する必要がある。また、細菌No.286株を同定したところ、グラム陰性の桿菌であるSerratia marcescens subsp. marcescensの近縁種であった。変換物質が目的とするヘプタデカンであることが確認できたら、細菌から変換酵素の単離を行う。
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