本課題「糸状菌が生産する揮発性抗菌物質を活用した環境リスク菌類の制御技術の確立」において、農産物の流通過程や食糧倉庫あるいは住環境等の閉鎖空間における有害菌類制御を目的として、新規に拮抗菌を選抜している。その結果、つくば市のオオムギ葉から葉面糸状菌の分離を行い、数種の拮抗菌を選抜した。また、既に申請者が選択した抗菌活性のある担子菌Irpex lacteusが生産する抗菌物質であるペンチルフルフラールと基本骨格が共通の類縁体2種の抗菌効果について、ヒトに有害なバイオハザードレベル2のPenicillium islandicumやAspergillus fumigatusおよび植物病原菌のGlomerella cingulataやFusarium oxcysporum f.sp.lycopersiciの生育抑制試験を行ったところ、強い抗菌活性が認められた。さらに、環境リスク菌の制御技術開発の実用性の確認のためペンチルフルフラールおよび2種類の類縁体をアクリル酸重合体樹脂に吸着させ、容器内に保持し徐放性を確認したところ、約14日にわたり室内アレルゲンの原因となるCladosporium属菌やAlternaria属菌の生育抑制効果が認められた。同時に容器内のヘッドスペースからガスクロマト装置で抗菌成分のフルフラールの検出を試みたところ、3種類の物質ともに大気雰囲気中への放出が確認された。
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