本課題「糸状菌が生産する揮発性抗菌物質を活用した環境リスク菌類の制御技術の確立」において、農産物の流通過程や食糧倉庫あるいは住環境等の閉鎖空間における有害菌類制御を目的として、新規に拮抗菌を選抜している。その結果、つくば市のコムギ葉から葉面糸状菌の分離を行い、トマト萎凋病菌Fusarimu oxysporum f.sp.lycopersiciに拮抗能を持つ菌株の選抜を行い、拮抗菌を選抜した。選抜された菌株25-2-1は、トマト萎凋病菌の培地上における生育と色素生産を強く抑制した。本菌は白色の菌糸体のみ形成し、形態的同定が困難であったため、rDNAのITS1+5.8s、rDNA+ITS2領域をPCR法で増幅し、Dye Terminator法でダイレクトシークエンスを行い、BLAST検索を行った結果、本菌はサルノコシカケ科カワラタケ類のTrametes sp.と98%の相同性を示した。同様に選抜された3菌株(B-12-1、B1-2-1およびWH1-2-1)は室内汚染菌のCladoaporium cladosporioidesやAlrernaria alternataの生育を抑制した。これら3菌株も培地上に胞子を形成しなかったっため、rDNAのITS領域で遺伝子解析したところ、B-12-1およびB1-2-1お互いに近縁で、Nectria属との関連が示唆された。WH1-2-1はPeniophora属菌(コウヤクタケ)に近縁であることが示唆された。3菌株の揮発物質をGC-MSで解析したところ、3菌株共にフラン化合物の一種が共通して検出された。本結果は、Kyu-W63も含めて、糸状菌の揮発性抗菌活性には、フラン化合物が大きく関与している可能性が明らかにされた。
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