研究概要 |
これまでの経緯:アミノポリカルボン酸系の金属キレート剤をその鉄錯体として逆相液体クロマトグラフ法(HPLC法)により一斉分析する法を確立した。また、これらの微量分析のための前処理方法として、陰イオン交換固相抽出力ートリッジによる濃縮を検討した。 目的:アミノポリカルボン酸類(APCAs)は金属イオンに配位し錯体を生成する性質により家庭用品から工業製品の製造工程まで多方面に亘って使用されているが、様々な形態で主に環境水系に排出されていることから、河川水におけるAPCAsの微量一斉分析法を確立する。 結果:陰イオン交換固相抽出力ートリッジによる河川水中APCAsの濃縮は、共存する陰イオンにより阻害された。河川水試料にあらかじめ塩化バリウム溶液を加え,また陰イオン交換カートリッジ上部にOnGuard Cartridgesを装着することにより,妨害成分の影響なしに河川水中の6種類のAPCAsを1.0nMまで定量することが可能となった。この方法を利用し、富山県内の西部を流れる小矢部川河口から12km地点までの橋9か所より採水した河川水試料について測定を行ったところ,エチレンジアミン四酢酸(EDTA)がすべての試料から2.0〜17.9nM,ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が5試料から1.7〜40.6nMの濃度で検出された。APCAsのうち使用量の多いEDTAが水環境中に広く,またDTPAが局所的に高濃度に存在することが確認された。 今後:海水の分析に適用する。海水においては河川水よりはるかに高濃度のイオン成分等のマトリックスが含まれるため、陰イオン交換固相抽出力ートリッジによる濃縮は困難と予想されることより、他の固相抽出力ートリッジ(活性炭カートリッジ、親水性相互作用カートリッジなど)用いた濃縮・妨害成分の除去等の検討を行う。
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