本研究は、ストレス環境下において選択的に翻訳されるmRNAを、マイクロアレイを用いてゲノムスケールで探索し、ストレス間での挙動を比較するとともに、共通性という観点から制御を規定するコンセンサス配列を同定することを目的としている。 1. ポリソームプロファイル解析とDNAマイクロアレイ解析 昨年度決定した塩ストレス条件に基づき、非ストレスおよび塩ストレス条件からポリソーム分画を行い、それぞれポリソームおよび非ポリソーム画分から独立に計4種類のmRNAを調製した。これらをセットで蛍光ラベルし、シロイヌナズナDNAマイクロアレイを用いてアレイ解析を行い、ポリソームと非ポリソーム画分に存在するmRNAの量比を、ストレスを与えたことによる変化という観点から定量し、複数の候補mRNAを得た。 2. 候補mRNAのストレスにおける翻訳状態 複数の候補mRNAについて、ストレス時の翻訳状態を各画分から調製したmRNAを用いたRT-PCRによってモニターしたところ、アレイの結果を完全に反映した。 3. ストレス間での共通性と特殊 昨年度実施した熱ストレスでのアレイ解析の結果と塩ストレスでの結果を比較したところ、全体としての挙動は両ストレス間で非常に類似していたが、一部遺伝子については、ストレス間で挙動が異なった。このことは、ストレス下での翻訳が共通の制御で行われているとともに、ストレス特異的な制御も存在することを示唆している。 今後、in silico解析等を通じて、制御を規定するコンセンサス配列が同定されることが期待される。
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