1.APX過剰発現/発現抑制によるレドックス応答解析モデル実験系の確立と評価 前年度にタバコ培養細胞で確立したエストラジオール(Est)による細胞質型APX一過的発現抑制系AtAS3に加え、今年度は植物体で解析可能なレドックスモデル実験系を開発した。pMDC7にシロイヌナズナ由来APX1をアンチセンスに組込み、シロイヌナズナ形質転換体のスクリーニングを進めると同時に、CaMV35SプロモーターによるAPX1過剰発現体(APX-3)およびT-DNA挿入によるAPX1破壊株(APX1-KO)を得た。さらに細胞質だけでなく、葉緑体由来のレッドクスシグナルにも着目し、Est誘導型プロモーターを有するRNAiベクターpXRを構築して、チラコイド膜結合型APXの一過的発現系の作製にも取組み、レドックス応答性を評価した。その結果、細胞質型および葉緑体型APXの発現抑制は、細胞内レドックス状態および環境ストレス耐性能に影響を与え、今回作製した系が、レドックス応答解析の良いモデル実験系であることが示された。今回作製したレドックス応答モデル実験系の中でも特にEst誘導によるAPXの一過的発現抑制系はこれまで報告がなく、生理条件に近い細胞状態でのレドックス応答機構解明が可能となる。 2.レドックス応答遺伝子群の機能解析 タバコ培養細胞AtAS3からはサブトラクション法により、また葉緑体型APX発現抑制シロイヌナズナからはマイクロアレーにより、包括的なレドックス応答遺伝子の探索を行い、多数のレドックス応答候補遺伝子を得、これらの中にはストレス応答シグナル伝達関連遺伝子も含まれていたことから、細胞内レドックス制御とストレス応答の分子機構解明の糸口になり得ることが示された。
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