本研究では、NMRを用いてR型レクチンファミリーに属する2つのタンパク質、放線菌由来キシラナーゼ中のキシラン結合ドメイン(XBD)と血球凝集能を持つミミズ由来レクチンのC末端ドメイン(EW29 Ch)の両糖結合ドメイン間における糖鎖結合メカニズムの違いを解析し、R型レクチンファミリーの持つ幅広い機能を解明することを目的とする。^<15>N-HSQCスペクトルによる糖との滴定実験を行い各種糖との結合活性(XBDについては、ラクトース、ガラクトース、キシロース、キシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオース、キシロヘキソース、EW29 Chについては、ラクトース、メリビオース、ガラクトース、a-メチルガラクトース、B-メチルガラクトース)を調べた。その結果、XBDの3つのサブドメイン(α、β、γ)で糖結合部位の存在が確認され、さらに各糖結合部位の結合活性が各種糖で異なるとともにキシロオリゴ糖の鎖長が長いほど結合活性が強くなった。従って、XBDがキシラン触媒ドメインに対する基質の固定と関係し、キシラナーゼの触媒機能を効率化することが示唆された。EW29Chでは2つのサブドメイン(α、γ)で糖結合部位が確認され、そのうちのα結合部位がどの糖に対してもγ結合部位に比べ遙かに強い結合活性を持ち、さらに、アノマー特異性も持つことが分かった。これらの結果より、2つの糖結合部位における結合様式が大きく異なることが明らかになった。また、STD-NMR法によりラクトースのガラクトース残基が主に結合に関与することが分かった。さらに、EW29 Chのケミカルシフト値の変化が各種糖で異なることから、糖結合によるタンパク質側の構造変化が糖により異なり、その違いが血球凝集能と関係することが示唆された。従って、R型レクチンの糖結合部位の糖結合活性及び特異性がその機能と重要な関係にあることが示唆された。
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