シリルエーテルに対する糖供与体の反応性の差に基づく二方向伸長戦略によるオリゴ糖鎖の効率的合成実現に向け、まず各種シリルエーテル糖受容体に対する糖供与体の反応性を調べた。ジフェニルホスファート、ホスフィンイミダート、ホスホロジアミダートを脱離基として組み込んだベンゾイル保護糖供与体を用いるTMSエーテルのグリコシル化反応はTMSOTf存在下0℃でいずれも円滑に進行し、対応するβ-グリコシドを良好な収率で与えた。また、ホスファート法においてはTMSエーテルのみならずTBSエーテルやTBDPSエーテルも糖受容体として機能することが明らかとなった。一方、ジエチルボスファイトを脱離基として組み込んだピバロイル保護糖供与体はシリルエーテルとは反応しない。そこで、6位水酸基をTBSエーテルとして保護した4位糖アルコールを糖受容体とし、本糖供与体を用いて化学選択的なグリコシル化を試みたところ、反応剤としてBF_3・OEt_2を用いると水酸基のみがグリコシル化された二糖が収率75%で得られることが分かった。生成物の6位TBSエーテルはジフェニルホスファートを組み込んだ糖供与体を用いることで直接グリコシル化可能であり、保護基の着脱を行うことなく二工程で分岐型三糖を得ることができた。 次に直鎖型三糖の合成への展開を試みた。6位水酸基をTBDPS基で保護し、ジエチルホスファイトを脱離基として組み込んだベンゾイル保護糖供与体を用いるグリコシル化反応はTMSOTf存在下-50℃で進行した。生成した二糖に対し、ジフェニルホスファートを組み込んだ糖供与体を反応させることで直鎖型三糖を収率良く得ることができた。なお、直鎖型三糖の合成は"one-pot"で行うことも可能であった。現在、本戦略を用いたシラシロシドE-1の合成を検討中である。
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