研究概要 |
昨年度は,我々が開発したオルトキノジメタン形成を経るタンデム環化反応を利用してエストロンの全合成を達成した。しかし,その合成ルートでは,エストロンのA環上の水酸基を導入するために多くの工程数を要していた。本年度は,あらかじめ酸素官能基を導入した基質を用いるタンデム環化反応が成功すれば,工程数の大幅な低減が可能と考えられ,しかも,鍵反応であるタンデム環化反応の適用範囲を明らかにすることにもつながるため,検討を行うこととした。その結果,酸素官能基を導入した基質(エン-ビスプロパルギルアルコール)を合成することはできたが,それを用いるタンデム環化反応がこれまで検討してきた反応条件では進行しなかった。今後,更なる条件検討が必要であると考えている。 一方,多種多彩な構造をもつエストロン誘導体の合成を見据え,その部分骨格構築に応用できる可能性を秘めた環化反応の開発研究を並行して行ってきた。今年度は,ω-ヒドロキシアルキル鎖を含有するアレニルエステル誘導体のエンド型閉環反応による環状エーテル合成およびその反応を基盤とした連続的炭素-炭素結合形成反応の開発に成功した。また,カルボキシル基を含有するスルホニルアレン誘導体のエンド型閉環反応による六員環ラクトン合成にも成功した。更に,ビスアレン誘導体の分子内[2+2+1]型環化付加反応が一般性の高いビシクロ[m.3.0]骨格構築法(m=4〜6)となることを明らかにした。
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