1.複雑な構造を有するエラジタンニン類の合成研究 分子内にvaloneoyl基を有するエラジタンニン類の合成を目指した。昨年度に行なったvaloneicacid誘導体の不斉合成法を基に、より効率的な方法を模索した。しかしながら、保護基の選択が極めて困難であり、更なる課題が残った。すなわちこの合成の最終段階ではフェノール部の脱保護が重要なステップとなるが、最も単純なメチル保護体では容易ではないことが予想された。そこで、還元条件下での脱保護が可能なベンジル基を選択したが、この場合は合成初期のビフェニルエーテル化が進行しなかった。 2.Nigricaninの合成 Nigricaninはエラグ酸様の骨格を持つ四環性化合物であり、特徴的な構造を有している化合物であり、部分的にアセタール構造が含まれているなど、比較的小さな分子であるにもかかわらず、合成的には難易度が高い。パラジウム触媒系反応を用いてこの化合物の短工程合成を行なう。芳香環上の置換基の種類により、ビアリール化反応の反応性に大きな違いがあることがわかった。その結果、メチル保護体を用いれば、Nigricanin骨格である四環性化合物の合成に成功した。 3.クマリンを親ジエン剤とするalternariolの合成 昨年度には、パラジウム触媒反応を鍵反応としてalternariolの合成を達成した。しかしながら、望まない位置異性体の形成が避けられず、改良法の開発が必要であった。そこで、クマリンに対するDiels-Alder反応を用いれば、上記の欠点を克服できるのみならず、より短工程での合成が可能であることが考えられた。本研究ではクマリンを親ジエン剤として活用したalternariolの合成を検討したものの、良好な結果は得られなかった。 4.パラジウム触媒反応における位置選択性についての考察 種々の置換パターンを有するフェニルベンゾエート誘導体に対するパラジウム触媒反応を行い、その位置選択性を調査した。
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