研究課題
基盤研究(C)
水素の安定同位体である重水素(D)で標識された化合物は安定で長期保存が可能なため、生体内の薬物動態や化学反応における反応機構の解明、タンパク質や酵素などの高次構造解析に使用される利用価値の高い化合物である。しかし重水素標識化合物は高価であり、入手可能な標識体が限定されている。重水素導入法としては重水素(D2)ガスを用いた還元反応が多用される。例えば、不飽和結合の接触重水素化、脱ハロゲン化、ベンジルアルコールの還元やエポキシドのD2還元反応などは重水素標識化合物の有用な合成法である。その他にも、D2ガスは原子炉劣化D20の再生や、LSI(大規模集積圓路)の製造工程でも利用されておりその有用性は高い。しかしD2ガスは極めて高価である。これは、その製法がD20の電気分解やH2ガス中に微量(約150ppm)存在するD2ガスの極低温.下での液化分留法に頼っているため、エネルギーや反応の効率に起因する。従って工業スケールにも対応したより実用的なD2ガス発生法の開発は極めて重要である。本研究課題は、我々がPd/Cを用いた官能基選択的な接触還元反応の開発研究の過程で、重水素化溶媒を反応溶媒としたところ反応基質に重水素が導入されることを見出した事から発展した。このPd/C触媒による重水素標識化法は、温和な中性条件下、重水素源としては最も安価なD20を用いる実用的手法である。平成18年度から19年度にかけて継続的に、Pd/C-D20-H2システムによるベンジル位選択的H-D交換反応の効率を向上し、より実用的な反応とするため、特に「反応時間の短縮及び基質適用性の拡大」を集中的に検討した。さらに、平成19年度は、これまでのH-D交換反応の検討過程で見出した、Pd/C触媒によるD20とH2間の、室温下における高効率的「H2-D2交換反応」、すなわち触媒反応による化学的D2ガス発生法の実用化を目指し、「反応条件の最適化」および、発生させたD2ガスを利用した「還元性官能基を有する化合物のone-pot接触重水素化反応」への適用を鋭意検討した。その結果重水素標識化合物の簡便合成法の確立に成功した。さらに、「官能基選択的one-pot接触重水素化法」、「反応容器内で発生させたD2ガスの採集法」及び「採集したD2ガスを用いた様々な基質の重水素標識法」も確立した。
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