研究概要 |
資源を海外からの輸入に依存している日本では,資源のリサイクル便用が盛んに叫はれている。そんな中,化学の分野においても,環境を汚さずにより安全かつ環境に優しい方法論の開発が待ち望まれている。低毒性で環境汚染しない溶媒を繰り返してリサイクル使用したり,触媒や反応試薬を回収再利用することは環境調和型化学である。パーフルオロヘキサン(n-C_6F_14)をはじめとするフルオラス(親パーフルオロカーボン性の)系の溶媒は,安全性の高い低沸点溶媒である。これらのフルオラス系溶媒の更に大きな特徴として,有機溶媒とも水とも混ざらずに3層を形成し、フッ素含量の高い有機化合物を選択的に抽出できるといった性質を有している。従って,通常の有機化合物や水溶性化合物から,分配抽出操作を行うだけでフッ素化合物を容易に分離精製できる。そこで,これらの性質を応用した環境調和型リサイクル・フルオラス不斉触媒の開発を検討した。平成18年度において,フルオラス修飾した不斉配位子として,まず天然型アミノ酸から誘導したジアミノ基部分にパーフルオロアルキル基を導入した触媒を数種類,調製することに成功した。平成19年度においては,チロシン由来のフェノール性水酸基にパーフルオロアルキル基を導入したフルオラス触媒が高い鏡像異性体選択性で不斉シクロプロパン化反応に応用できることを明らかにした。さらに,フルオラスシリカゲルを用いた固相抽出法により容易にフルオラス触媒を回収することにも成功した。平成20年度では,反応終了後にフルオラスシリカゲルを用いた固相抽出法により回収したフルオラス触媒を繰り返してリサイクル使用した際,触媒能に変化があるかどうかについて調査する。また,フルオラス触媒による不斉シクロプロパン化反応を応用し,抗不整脈薬であるシベンゾリンの誘導体の合成法を確立し,医薬品開発への展開を目指す。
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