研究概要 |
申請者はアロマターゼ阻害活性を有するstandishinalの不斉全合成を目指し、初年度ではアトロプ異性をもつ反応基質を用いた分子内不斉Heck反応を検討した。この結果、本不斉反応は動的速度論分割に基づき高収率、高エナンチオ選択的に進行することを明らかにした。また、上記の分子内不斉Heck反応の基質にabeoabietane 骨格の構築が可能な化合物を用いてstandishinalの類縁体であるdichroaual B,dichroauone,taiwaniaqunone Hの不斉全合成を試みたところ、得られた化合物は非天然型の光学異性体である事が分かった。そこで、平成19年度では天然型のstandishinal類縁体の全合成を目指して検討を行った。キラルリガンドをR-体からS-体に変更して不斉Heck反応を行なう事で、天然型の(-)-dichroanal B,(-)-dichroanone,(-)-taiwaniaquinone Hの最初の不斉全合成を達成する事ができた。さらに、総収率の向上を目指して合成ルートの改良を種々検討したところ、昨年度開発したdichroanone,taiwaniaquinone Hの総収率をそれぞれ28%→55%,22%→54%に向上させる事に成功した。また、これまでにStoltz等によって報告されている(+)-dichroanal Bの総収率は11工程/4%であるが、申請者が開発した合成プロセスは8工程/30%とStoltz等の結果を大幅に改善するものである。 一方、アロマターゼ阻害活性を示すstandishinalはA/B環がトランスの5,6-員環をもっているため、上述のHeck反応の生成物からの誘導は不成功に終わった。このため、アビエタン型の化合物から誘導したジアルデヒドを用いたアルドール型反応によりdl-standishinalの合成に成功し、それらの合成中間体も含めてアロマターゼ阻害活性を調べた結果、A/Bトランスよりもシスの方が阻害活性が高くなることを明らかにした。
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