研究概要 |
Salinosporamide Aは細胞周期,免疫応答,アポトーシスなどさまざまな生命現象にかかわる20Sプロテアソームに対して特異的かつ非可逆的に結合して優れた阻害活性を有し、がん細胞に対しても高い細胞毒性を示すことから抗がん剤の重要なリード化合物となりうる医薬資源としてその発展が大きく期待されている。本研究ではSalinosporamide Aおよびその新規類縁体の合成に柔軟に対応できる重要合成中間体を光学活性体として十分な量を供給可能にするとともに、その新規類縁体の合成を格段に効率的に行うことを目的としている。σ対称ジオールの不斉非対称化反応の有効な不斉リガンドとなりうるC_2-対称性を有するピペラジン型キラルジアミンDMPPをL-プロリンから合成した。次にDMPPをジクロロメタン中で塩化銅(II)の錯体とし、ジイソプロピルメチルアミンを塩基として塩化ベンゾイルにてアシル化し、σ対称性を有する1,3-ジオールの不斉非対称化を検討した。基質の構造により不斉収率は異なるが、Salinosporamide Aの鍵中間体となりうる基質を、極めて高い不斉収率を得ることに成功した。 不斉非対称化して得られた生成物を既知の光学活性化合物に化学誘導することによりその絶対配置の決定を試みた。アシル化されていない水酸基を還元により除去することで既知化合物に導く計画であったが、立体障害が大きいためかその変換は難航している。今後更に検討して絶対配置の決定とSalinosporamide Aの重要中間体合成へと展開していきたい。
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