研究概要 |
本研究の目的は,人工酵素の開発とその機能発現のメカニズムの解明を介して,申請者の退職に伴う測定など技術を伝承することである.既に,申請者は,金属ポルフィリンを用いて,人工酵素(触媒)を開発してきたが,その機能発現メカニズムは,未だ明確にできていない.そこで,新たな触媒機能の開発とそのメカニズムの解明を試み,以下に示す結果を得た. 1)アドレナリンなどのカテコールアミン類に対してカテコールアミン酸化触媒機能をもつ人工触媒として,イオン交換樹脂に固定化したマンガンポルフィリンを開発した.これは,アドレナリンなどを対応するクローム体やルチン体へと酸化する機能を持つ.この酸化触媒機能は,中心金属であるマンガンイオンの酸化・還元のサイクルに起因している可能性を示すことができた, 2)触媒機能以外に,金属ポルフィリン固定化担体の新たな用途を開発するため,HPLG用充填剤としての可能性を検討した. 3)金属・八臭化ポルフィリン,Fe^<3+>-OBTM,Co^<3+>-OBTM,およびMn^<3+>-OBTMについて,有機過酸化物などに対するペルオキシダーゼ機能を検討し,Fe^<3+>-OBTMが酵素に比肩する機能を持つことを明らかにした.さらに,Fe^<3+>-OBTMの持つペルオキシダーゼを機能のメカニズムを,共鳴ラマンスペクトル法で解明するため,連続流れ方式でのセルなどを開発した.さらに,得られた結果から,中心金属のFe^<3+>⇔Fe^<4+>のサイクルによってペルオキシダーゼ様機能が発現していることを明らかにした. なお,18年度および今年度の研究を通じて技術の伝承をすることができた.
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