研究課題
基盤研究(C)
Menkes病(欠乏症)及びWilson病(過剰症)の病因は、ゴルジ体膜局在の銅輸送ATPaseの異常である。ATP7Aは肝細胞以外のほとんど全ての細胞に発現しており、一方ATP7Bは肝臓、小腸などに局在して存在する。Menkes病では、ATP7Aの異常によって銅の細胞外排出・細胞間の転送が阻害され、経口的に摂取された銅は従って消化管粘膜に異常集積し、その他の部位には全身性に銅欠乏が生じ、そのため脳内の銅欠乏によって中枢神経系の発達が阻害される。血液脳関門の構成細胞でもATP7Aが欠損するため、非経口的に投与した場合であっても銅は脳内へ輸送されない。脳神経系における昨今の研究についてみると、Menkes病モデル動物であるmacularマウスを用いた研究によって銅欠乏が中枢神経細胞の壊死とアポトーシスを引き起こすことが明らかにされたが、その詳細なメカニズムは未だ不明である。また、Wilson病における銅過剰が引き起こす中枢神経障害についても、カテコールアミン等の神経伝達物質の変動が考えられるが、詳細な病態解析、分子生物学的研究はいまだに少ない現状にある。申請者は今年度、理化学研究所加速器により製造した多元素同時追跡マルチトレーサー法と^<67>Cuと高感度分析技術(ICP-MS、ICP-MS/HPLC)を用い、銅の組織レベル、個体レベルでの動的挙動を解析・評価し、臓器間(特に脳神経系)との銅のやり取りと疾病の進行、他の微量金属元素との相互作用などを総合的に解析した。具体的には、正常ラット、Wilson病モデル動物LECラット及びMenkes病モデル動物macularマウスの加齢・病態の進行に伴って変化する脳、肝臓、腎臓におけるMT、SOD、その他銅結合タンパク質の細胞レベル、組織レベルでの活性と各種微量金属元素の含有率をICP-MS、ICP-MS/HPLCを用いて測定し、動物個体内のRI銅を用い代謝過程を追跡した。
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