研究概要 |
平成18年度には,以下の〔1〕〜〔4〕のことを行った. 〔1〕ヒトFEN1のヌクレアーゼドメインとPCNA結合領域の間に見出されたヒンジ領域(-Gln333-Gly334-Ser335-Thr336-)に注目し,小さな側鎖をもつアミノ酸残基,GlyならびにSerを用いて,ヒンジ領域の長さを4,6,8,10残基と長くした4種類の変換体を作製した.大腸菌のシステムを利用して,遺伝子組換えタンパク質として大量発現させ,これまでに確立した方法(アフィニティー,イオン交換,ゲルろ過カラムクロマトグラフィーの順)により高純度に精製した. 〔2〕FITCラベルされた5' flap DNAを基質として,ヒトPCNAの存在下ならびに非存在下で,各変換体のヌクレアーゼ活性を行い,PCNAによるヌクレアーゼ活性の促進効果を測定し,ヒンジ鎖長による影響を解析した. 〔3〕これまでの研究で,ヒンジ領域に変異を導入することにより,ヒトPCNA存在下で,ヌクレアーゼ活性のNaCl濃度依存性が見られることから,上記変換体に関して,NaCl濃度に対するヌクレアーゼ活性等の特性を調べた. 現在,〔2〕および〔3〕のデータを基にヒンジ領域の機能解析を進めている. 〔4〕5' flap DNA上でヒトPCNAと各種FEN1変換体との直接結合(3者複合体の形成)を解析するため,蛍光相互相関分光法の利用する.Atto655(赤色)で蛍光ラベル化した5' flap DNAの調製,ならびに,FEN1のC末端側に化学発光タンパク質GFP(Green Fluorescent Protein;緑色)を結合させた融合タンパク質の調製した.融合タンパク質の調製方法は,〔1〕同様に行うが,この際にFEN1による5' flap DNAの切断を避けるため,触媒部位に存在し切断反応に関与するAsp181残基をAlaに変換し,ヌクレアーゼ活性を欠失させたタンパク質を調製した.蛍光相互相関分光法の測定は,予備実験で決められた条件に従って行っている.現在,NaCl濃度を変化させて,5' flap DNA/PCNA/FEN1の3者複合体形成の解析を進めている.
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