我々は今まで、マウス胎児・新生児の肝臓・腎臓におけるCSE活性・タンパク質発現が成体よりもはるかに低いことを示してきたが、これは母乳からのシステイン供給がマウスの初期の発育に重要であることを示唆している。今回我々は、マウス母親の妊娠期・出産後における肝臓・腎臓でのCSE発現を調べた。肝臓の肥大は妊娠12.5日から確認されてそれ以降顕著になったが、肝臓におけるCSEの発現誘導は生後1日目からであり、その後徐々に上昇して2週目に最大(2倍以上)となった。産仔を出産直後にすべて取り除くと肝臓は肥大せずCSE誘導も起こらないので、授乳の維持がその双方に必須であることが明らかとなった。一方腎臓は、妊娠出産を通してその臓器重量に大きな変化は見られなかったが、最大のCSE発現誘導は妊娠15.5日に起こり、その後徐々に減少していった。妊娠後期には血中の総ホモシステイン濃度が正常時の7割程度になっており、CSEの腎臓での発現誘導がそれに関与している可能性が示唆された。妊娠高血圧症である子癇ではホモシステイン濃度が妊娠後期に下がらないという報告があり、CSE欠損マウスでは同様にホモシステイン濃度が下がらずに高血圧になっている可能性も考えられる。 遺伝子改変により新規作成したCSEヘテロ欠損マウスの掛け合わせから、シスタチオニン血症モデルとしてCSEホモ欠損マウスを得た。CSEホモ欠損マウスは、肝臓・腎臓ほかの主要臓器でCSE遺伝子・タンパク質・酵素活性を完全に消失していた。現在上記の可能性を含め、その表現系を詳細に検討している。
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