研究課題/領域番号 |
18590048
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
宮浦 千里 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (20138382)
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研究分担者 |
稲田 全規 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 講師 (80401454)
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キーワード | プロスタグランジンE / がんの骨転移 / がんの肺転移 / 固形腫瘍 / がん / 骨代謝 |
研究概要 |
マウス悪性黒色腫(メラノーマ)をプロスタグランジンE(PGE)合成酵素遺伝子欠損マウスに移入して骨転移、固形腫瘍形成、肺転移を調べ、さらにそのメカニズム解析とPGEレセプター作働薬の有効性を解析した。その詳細は以下の通りである。 1.膜型PGE合成酵素(mPGES)遺伝子欠損マウスを用いた転移実験 マウス悪性黒色腫(メラノーマ)であるB16細胞を用いて、マウスへの移入実験を実施した。B16細胞をマウス尾静脈より移入すると骨や肺に高率に転移する。mPGES遺伝子欠損マウスおよび野生型マウスを用いてB16移入実験を行ない、移入より14日目において、骨への転移は大腿骨の解析により、肺転移は肺表面の解析および切片による形態学的観察を行なった。その結果、mPGES遺伝子欠損マウスでは骨転移と肺転移がいずれも顕著に抑制された。野生型マウスにEP4アンタゴニストを投与した場合も肺転移が起こりにくかった。 2.がんの固形腫瘍形成におけるPGEの関与 mPGES遺伝子欠損マウスおよび野生型マウスを用いて、B16細胞を背部皮下に移植して固形腫瘍を形成させ、その体積を経日的に計測した。その結果、mPGES遺伝子欠損マウスでは固形腫瘍の増殖が顕著に抑制され、血管新生を伴った腫瘍の増大が進展しなかった。また、野生型マウスにEP4アンタゴニストを局所投与した場合も、固形腫瘍形成の抑制が観察された。 以上の結果より、メラノーマの転移ならびに固形腫瘍の形成には宿主由来のPGEが関与しており、宿主細胞のEP4受容体を介してPGEが癌の増殖と転移を促進していることが明らかになった。その作用機構としては、血管新生の制御ならびに腫瘍免疫の制御機構が考えられる。
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