研究課題
ペルオキシソームはすべての真核生物に存在するオルカネラで、脂質代謝において車要な役割を担っている。しかし、中枢神経系細胞での役割はあまり報告されていない。ペルオキシソーム膜ABCタンパク質であるABCD1の機能不全は、極長鎖脂肪酸の蓄積を特徴とする副腎白質ジストロフィーALDを引き起こす。本研究ではABCD1をノックダウンしたグリア細胞株やマクロファージ系細胞を調製し、特にコレステロール代謝系への影響について検討した。1.グリア細胞株ではABCD1機能減少により、ペルオキシソームの極長鎖脂肪酸β酸化活性の減少が認められた。また[^<14>C]酢酸で代謝ラベルすると、ラノステロール画分への取り込みが増加し、コレステロール画分への取り込みに減少が認められた。さらにコレステロール含量の低下が確認された。以上のことからグリア細胞株におけるABCD1の機能とコレステロール代謝には密接な関連性があると推察された。2.THP-1マクロファージにおいてABCD1をノックダウンし、コレステロール代謝への影響を調べた。その結果、ABCD1ノックダウン細胞において、コレステロールの細胞内への取り込みの減少、ApoA1依存的なコレステロール排泄の亢進、ApoEの細胞外への排泄の増加、コレステロール合成の増加などが認められた。このことから、マクロファージ系の細胞では、ABCD1の機能欠損により細胞外へのコレステロールの排泄が亢進していると推察された。ABCD1機能減少が、どの様にコレステロール代謝と関連しているかについては今後さらに検討が必要であるが、ABCD1機能減少によりペルオキシソームでの分解が抑制された生理活性脂質が、転写因子の活性化を介してコレステロール代謝に影響している可能性が予想された。
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