申請者は、培養神経前駆細胞および大脳皮質切片培養系を用いて、エンドセリンによるGタンパク質共役受容体からのGqシグナルにより遊走が阻害されることを見いだした。この結果から、神経前駆細胞遊走においてGタンパク質シグナルによる制御機構が存在することが示唆された。Gqシグナルに対する機能分子を探索した結果、Gqシグナルは新規ヌクレオチド交換因子Ric-8Aにより増強されること、またGqが膜ラフトタンパク質であるフロティリンと相互作用し、そのシグナルに影響することを明らかにした。大脳皮質形成過程において、Gタンパク質シグナルによる制御機構が生理的に重要であることをin vitroで調べるために大脳皮質の切片を用いた神経前駆細胞移動アッセイシステムの確立を行っている。アデノウイルスによる脳室帯細胞のGFP標識、および標識細胞の皮質への移動を、タイムラプス顕微鏡で生きたままの動態を評価できるようにするために、今まで問題であった蛍光強度、培養条件の検討を行った。現在、アデノウイルスを感染させた大脳皮質切片をガラスボトムディッシュ上にアガロースゲルで固定し培養する方法を見いだし、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて、生きたまま脳切片における細胞の移動などの動態を観察できるようになりつつある。一方、神経前駆細胞の機能を調節するGPCRに対する機能抗体を得るために、神経前駆細胞に発現するGPR56に対する抗体の作製を行った。Sf9-バキュロウィルス発現系を用いてGPR56細胞外ドメインのリコンビナントタンパク質を調製し、これを抗原としてモノクローナル抗体の作製を行った。今後、これらの抗体を用いて、神経前駆細胞に対する機能抗体をスクリーニングする予定である。
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