申請者はこれまでエンドソームにおける小胞輸送を制御するAAA-ATPase:SKD1/Vps4Bについて研究を行ってきた。最近、変異型SKD1(E235Q)の過剰発現により変型したエンドソーム(動物細胞におけるvpsクラスEコンパートメント)にユビキチン化された膜蛋白質が蓄積することを見出し、さらにそこに蓄積したユビキチン化膜蛋白質の網羅的プロテオミクス解析に成功した。同定された膜蛋白質の機能およびその代謝回転(寿命)がユビキチン・リソソーム系によりどのように制御されているかについて明らかにすることを目的として研究を行ってきた。その結果現在までに以下のような成果を得ることができた。(1)トランスフェリン受容体が鉄イオン濃度依存的にユビキチン化され、リソソームにおける分解が促進される事を明らかにした。興味深いことにこのユビキチン化・分解の促進は遊離の鉄イオンが必要で、Ferritinの過剰発現により遊離の鉄イオンが枯渇した場合には認められなかった。さらに、ユビキチン化部位であるリジン残基をアルギニン残基に変換した変異体では局在は変化しなかったものの、そのユビキチン化は認められず、代謝回転(寿命)が野生型よりも長くなっている事を明らかにした。現在ユビキチンリガーゼ同定のための酵母ツーハイッブリッドスクヲーニングを行っている。(2)ITM2Bについてもユビキチン化部位であるリジン残基をアルギニン残基に変換した変異体を細胞内に発現させ、その機能および細胞内輸送の変化を野生型と比較・検討を行ったところ、予想に反して両者の間には細胞内局在や代謝回転速度に違いが認められなかった。ITM2Bは細胞外領域が切断を受けることにより細胞外へと分泌されることが知られている。この分泌効率の違いを調べるため、現在細胞外領域に体する特異的抗体を調整中である。
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