研究課題/領域番号 |
18590062
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
横田 伸一 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (10325863)
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研究分担者 |
藤井 暢弘 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90133719)
岡林 環樹 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10359995)
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キーワード | ウイルス感染 / 宿主免疫応答 / 自然免疫 / Toll-like receptor / negative feedback / 麻疹ウイルス |
研究概要 |
麻疹の病態形成においてウイルスによる免疫抑制とそれにともなう細菌の二次感染が重要と考えられており、様々な免疫抑制機構が提唱されている。私達は、単球系の細胞株で麻疹ウイルス感染によって、転写因子NF-κBの活性化が抑制されていることを見出した。この現象が麻疹ウイルスによる新奇の免疫抑制機構と考え、その分子機序を検討した。 ヒト単球系細胞株THP-1およびU937に麻疹ウイルスHalle株を感染させて樹立した持続感染細胞株を主な解析に用いた。各細胞株を活性型vitamin D3で処理後、大腸菌O111:B4由来LPSで刺激をした。感染細胞では、LPS刺激によるIL-8誘導およびNF-κBの活性化がほとんど認められかった。一方、上皮系の感染細胞株ではNF-κB活性化の抑制は認められなかった。免疫沈降実験で、LPS刺激によるTAB2とTRAF6の複合体形成が感染細胞では全く認められなかった。NF-κB活性化の情報伝達に必須なTAK1/TAB2/TRAF6複合体の形成がウイルスによって抑制されていると推定した。宿主のNF-κBのネガティヴレギュレーターであるA20の発現増強が感染細胞で認められ、RNAiを用いたA20の発現抑制により、LPSによるIL-8産生誘導が回復した。また、ウイルスのphosphoprotein(P蛋白質)発現プラスミドの導入によりA20の発現誘導が認められた。 以上の結果から、麻疹ウイルスのP蛋白質が感染単球系細胞で宿主のA20を恒常的に発現させることによって、ウイルス自体あるいはLPS刺激によるNF-κBの活性化を抑制していると推定した。麻疹ウイルスが最初の感染場所である気道上皮細胞から血球細胞に感染し、血行性に全身感染へ移行する過程において、炎症反応を惹起しない状態の感染単球系細胞は、宿主からの排除を逃れることで全身移行に有利にはたらいていると考えられる。
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