細胞がん化の研究は遺伝子の変異などのジェネティクス異常に基づいた解析が行われてきたが、クロマチン修飾異常などのエピジェネティクス異常による細胞がん化機構の解明が必要とされている。本課題においては、肝前がん病変において発現上昇するクロマチン関連因子(ヒストン修飾因子やヒストンバリアント)の細胞がん化に与える影響や機能解析を以下の3点を中心に行った。 1.発がん過程において発現上昇するクロマチン関連因子の細胞がん化に与える影響 発がん過程において発現上昇するヒストン修飾酵素を同定した。その中で、ヒストンアセチル化酵素HBO1はがん遺伝子c-Ha-rasのトランスフォーメーション活性に影響を与えることを明らかにした。また、ある種のヒストン脱アセチル化酵素は足場非依存的細胞増殖能を促進することを明らかにした。 2.発がん過程において発現上昇するクロマチン関連因子の遺伝子機能に与える影響 発がん過程において発現上昇するヒストンアセチル化酵素MOZが転写因子Nrf2/MafKの転写共役因子として機能し、腫瘍マーカーである胎盤型グルタチオントランスフェラーゼ(GST-P)の発現上昇に関与することを明らかにした。 3.発がん過程において発現上昇するクロマチン関連因子の酵母対応遺伝子の機能解析 発がん過程において発現上昇するヒストンバリアントの酵母対応遺伝子の破壊株は、ヒストン修飾やクロマチン構造に影響を与える化合物に対して抵抗性を示すことを明らかにした。
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