1.ポリアミン(プトレスシン、スペルミジン、スペルミン)の細胞内濃度は合成、分解及び細胞内外との輸送により厳密に調節されており、過剰ポリアミンは細胞毒性をもたらす。大腸菌のポリアミン分解酵素欠損株では培地に高濃度のスペルミジンを加えると生存率が低下する。そこで33種の排出蛋白質遺伝子クローンをポリアミン分解酵素欠損株に導入し、スペルミジンの毒性を解除する排出蛋白質遺伝子の同定を試みた。その結果、small multidrug resistance familyに属するMdtJIがスペルミジン排出蛋白質であることを見出した。MdtJやMdtIのみでは排出活性を示さず、両蛋白質が必要であった。また、活性発現に関与する11個のアミノ酸残基を同定した。 2.酵母のポリアミン取り込み蛋白質としてDUR3とSAM3を同定し、プトレスシン、スペルミジンに対するKm値を求めた。また、DUR 3はポリアミン輸送プロテインキナーゼ2(PTK2)によりThr^<250>、Ser^<251>及びThr^<684>がリン酸化され、活性化されることが明らかとなった。 3.興奮性神経伝達物質グルタミン酸の受容体の一種であるNMDA受容体は学習・運動などの神経可塑性の中心的役割を担りている。スペルミンはこのNMDA受容体を二面的(脱分極時の活性促進と過分極時のチャネルブロック作用)に調節する。NMDA受容体の活性化に関わるスペルミン結合部位は、N末端側に存在していた。この部位を調節領域(R-domain)と命名し、この約350アミノ酸残基から成るR-domainを大腸菌で発現させ、3種の精製R-domain(NR1-R、NR2A-R及びNR2B-R)を得た。これらR-domainへのスペルミン、脳機能改善薬イフェンプロジルの結合能を測定した。更に、現在はこれら3種のR-domainのX線結晶構造解析を目指している。
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