研究課題
脂肪滴は細胞内における中性脂質貯蔵装置であり、脂肪滴形成は肥満、脂肪肝、動脈硬化などの生活習慣病の発症と関与している。本研究課題は、脂肪滴に存在する脂質代謝酵素に着目することで、脂肪滴の形成および消失のメカニズムを明らかにすることを目的としている。昨年度までの研究では、細胞内で脂肪酸を基質として中性脂質が生合成される際に、脂肪滴に存在するアシルCoA合成酵素が重要なことを示す結果を得ている。この成果をふまえ、今年度の研究では、細胞内における脂肪滴の形成部位を明らかにすることをめざした。ヒト肝由来培養細胞HuH7をNile redで染色したところ、細胞の周縁部に穎粒状の蛍光が観察された。Nile redは疎水性色素であり、生体内では中性脂質との親和性が高いことを考慮すると、脂肪滴が細胞の周縁領域に分布しているものと考えられた。これを検証する目的で、蛍光標識脂肪酸を細胞に投与し、中性脂質の合成部位の検出をこころみた。その結果、やはり細胞周縁部に顆粒状の蛍光が検出され、細胞周縁部の脂肪滴で中性脂質合成が盛んなことが示唆された。一方、脂肪滴は細胞の中央部分には少量しか検出されないことから、細胞中央付近の脂肪滴の分布について、他のオルガネラの分布との比較を行った。その結果、脂肪滴は核の存在する領域には検出されず、また、ゴルジ特異的蛍光染色との比較から、ゴルジ体の分布する領域にも脂肪滴は殆ど存在しないことがわかった。これらの結果から、中性脂質合成とそれに引さ続く脂肪滴の形成は細胞の周縁部分からはじまり、脂肪滴形成の進展にともなって細胞の中心方向へと進行していくことが考えられた。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
J. Lipid Res. 48
ページ: 1280-1292