研究課題
脂肪滴は細胞内における中性脂質貯蔵装置であり、脂肪滴形成は肥満、脂肪肝、動脈硬化などの生活習慣病の発症と関与している。本研究課題は、脂肪滴に存在する脂質代謝酵素に着目することで、脂肪滴の形成および消失のメカニズムを明らかにすることを目的としている。これまでの研究から、脂肪滴に特異的に存在する脂質代謝酵素として、17β-hydoxysteroid dehydrogenase11(17βHSD11)を見いだしている。今年度の研究では、生細胞中での脂肪滴の生理的な動態の観察が可能な系を確立する目的で、17βHSD11のC末端側にGFPを融合させた蛋白の細胞内発現を試みた。17βHSD11-GFP発現ベクターを作成し、ヒト肝由来培養細胞株HuH7にトランスフェクトして細胞内分布を観察した結果、脂肪滴と考えられる球状の細胞内顆粒の表面に緑色蛍光が観察された。細胞に脂肪酸の1種であるオレイン酸を投与して脂肪滴の発達を促進させたところ、蛍光を発する顆粒の大きさも増大していた。また、同様の手法によって、ペプチドトランスポーターの一種であるTAPL(ABCB9)のC末端にGFPを融合させたコンストラクトにっいても細胞内分布を調べた。この場合にも、蛍光は球状の細胞内顆粒の表面に観察されたが、この蛍光は蛍光標識デキストランを貪食させた場合のシグナルやリソソームマーカと局在が一致することから、TAPL-GFPはリソソームに局在しており、脂肪滴とは分布が異なっていた。これらの結果から、17βHSD11-GFPは脂肪滴に特異的に分布しているものと考えられた。さらに、17βHSD11-GFP安定発現株の樹立を試みた。緑色蛍光を発するコロニーが1つ観察され、コロニーの細胞数を1000ヶ程度にまで増殖させることに成功した。しかし、その後の限界希釈によるサブクローニングでは細胞は漸次死滅した。
すべて 2008
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