研究概要 |
モデル動物としてラットを用い、主要なアシルCoAチオエステラーゼ(ACOT)分子種について以下の検討を行った。1)cDNAクローニング:これまでに十分な解析が行われていないACOT9及び11のヒト及びラットホモログをクローニングした。さらに抗体を作製し、ACOT9は皮下脂肪などで検出され、心臓における発現が顕著であることを明らかにした。GFP融合タンパク質として発現させた結果、細胞内ではミトコンドリアに局在することを確認した。一方、ACOT11mRNAレベルは褐色脂肪組織で最も高く、やはりミトコンドリアへの局在が予測された。2)高脂肪食負荷による発現変化:ラットに高脂肪食を4週間自由摂食させ、ACOT分子種の発現レベルを比較検討した。ACOT1,2,7,9,11のうち、ACOT2の発現レベルが肝臓と心臓で2倍程度上昇し、腸間膜脂肪で有意に低下した。褐色脂肪組織での発現が顕著であったが、特に大きな変化は認められなかった。ACOT9もまた心臓で2倍程度上昇したが、ACOT1及び11に関しては特に変化が認められなかった。絶食やPPARαリガンドによってACOT1,2は著しく誘導されたが、ACOT9,11に同様な変化は認められず、遺伝子発現調節機構の相違が推測された。従来から脂肪組織におけるACOT活性が報告されてきたが、今回、いずれの脂肪組織においても主にミトコンドリア局在型のACOT分子種が発現していることが明らかになった。特に褐色脂肪組織では脂肪酸酸化を介する熱産生に関与する可能性が考えられた。一方、高脂肪食負荷によるACOTの発現誘導は顕著なものとは言えず、長期間の継続的な脂肪酸過剰負荷に対してACOTによるアシルCoA処理能力は十分ではないと考えられた。以上の研究成果を第27回日本肥満学会と日本薬学会第127年会(合計4演題)において発表した。
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