研究概要 |
近年、体内時計の制御を司るBrain and Muscle Arnt like protein 1(BMAL1)が脂肪細胞機能の調節に深く関与していることが明らかとなった(Shimba, et. al. PNAS 2005)。我々は、肥満に伴いマウス脂肪組織において、BMAL1発現量が顕著に増加すること、またその一方で肝臓ではこの増加が認められないことを明らかにした。これらの結果は、肥満に伴う血中脂質濃度の変化が脂肪細胞においてBMAL1発現量に影響を与えることを示唆している。そこで本研究では、培養脂肪細胞及び肝細胞を用いてBMAL1発現への脂肪酸の影響について検討した。 3T3-Ll細胞は常法に従い脂肪細胞へと分化誘導し、実験に供した。遺伝子発現量は、RT-qPCR法により測定した。培養液中のプロスタグランジンE_2(PGE_2)量はprostaglandin E_2 EIA Kit(Cayman Chemical)を用いて測定した。 3T3-L1脂肪細胞を種々の脂肪酸により処理し、BMAL1発現量を検討したところ、アラキドン酸処理により顕著な発現量の増加が示された。しかしながら、このアラキドン酸によるBMAL1発現量の増加はラット初代培養肝細飽においては認められなかった。次いで種々の阻害剤を用いてアラキドン酸代謝物ならびに細胞内シグナル伝達因子のBMAL1発現への影響を検討したところ、PG類および細胞内Ca^<2+>がアラキドン酸によるBMAL1の発現誘導に関わることが示された。事実、アラキドン酸処理により培養液中におけるPGE_2は著しく増加し、その濃度はBMAL1の発現誘導に充分に高いものであった。 以上の結果より、食事由来のアラキドン酸がPGE_2に代謝され細胞内Ca^<2+>を介して脂肪細胞におけるBMAL1の発現を誘導していることが示唆された。
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