遺伝的欠神発作モデルであるlethargic(lh/lh)マウスにおいて成熟後の全脳の湿重量が発作を生じないコントロールマウス(+/+)より軽いことから、発現に伴い、脳の発達あるいは成熟過程が何らかの障害を受けることが予想されたので、発作発現から6週後の9週齢lethargicマウスの脳切片において細胞の形態変化を観察したが、コントロールマウスとの問に差は認められなかった。また、変性神経細胞結合性蛍光誘導体(Fluoro-Jade B)染色によっても変化は認められなかった。この点に関しては、発作が発現し始める時期からの経時変化を検討すべきであると考えられた。 次に、以前の結果より、lethargicマウスにおける欠神発作発現にcyclic AMP responsive element(CRE)-binding protein(CREB)を介した転写の活性化およびMAPキナーゼ系が関与する可能性を示唆してきた。そこで、視床においてcAMPおよびCa^<2+>に関連する細胞内情報伝達系およびMAPキナーゼ系に関し、関係するmRNA発現量を市販のマイクロアレイキットを利用し、lethargicマウスとコントロールマウスで網羅的に比較した。約150のmRNAについて調べたところ、Neuropeptide Y、 Early growth response 1、ELKI、Heat shock protein 1、calmodulinのmRNAで発現の低下傾向が認められた。また、以前、ゲルシフトアッセイで認められたCRE結合活性の増加が、CREBの総量増加にはよらず、活性化体であるリン酸化CREBの増加であることを明らかにしたが、これと一致してCREBのmRNA発現量に差は認められなかった。現在、新たにmRNA発現量に変化の認められたものに関してタンパク発現レベルについて調べている。
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