近年、多くの疾患が様々なストレスによって引き起こされることから、ストレスそのものが疾患発症の直接的な原因となっていることが多く、細胞のストレス応答機構を探ることは、ストレスに対する生体防御機構を知るうえで重要な研究課題である。最近、細胞のストレス応答反応の一つとして、細胞に対して熱ストレス・ミトコンドリア機能障害・酸化ストレス・UV照射などのストレスを与えると、ストレス顆粒(stress granule)と呼ばれる凝集体が細胞質に形成されることが報告され、その生理的意義が注目されている。申請者は、最近、熱ストレス条件下においてTIS11がストレス顆粒に局在することを初めて見出している。今回、TIS11が熱ストレスやミトコンドリア機能障害ではストレス顆粒へ局在するが、一方、酸化ストレスではストレス顆粒へ局在しないことを見出した。そして、このストレスの種類に依存したTIS11のストレス顆粒への局在は、p38シグナル伝達経路の活性化の有無によって制御されることを明らかにした。さらに、p38シグナル伝達経路の活性化によるTIS11のリン酸化状態の変化によって、TIS11のストレス顆粒への局在が規定されることを証明した。また、TIS11のストレス顆粒への局在にはmRNA結合能を有するZn^<2+>フィンガードメインが重要であることを発見し、TIS11がin vitroでmRNA分解作用を持つことから、ストレス顆粒内でTIS11がmRNA不安定化因子として機能している可能性を提唱した。
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