糖タンパク質糖鎖のような、複雑な構造を持つオリゴ糖の構造を正確に把握するには、回収が可能で高分離能を有する液体クロマトグラフィーがよく利用される。また、微量の糖鎖を高感度で分析するための手段として、様々なオリゴ糖の蛍光標識法が開発された。現在では、様々な分離モードを使って。数百種類におよぶ糖タンパク質糖鎖の分離例が報告されている。したがって、特定の精鎖の機能を解析した時には、過去の分離データを参考にすれば、容易に糖鎖を高純度で得ることが可能である。しかし、蛍光標識反応としては一級アミノ基をもつ蛍光試薬とシアノ水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤を使って糖のアルデヒド基を標識する、いわゆる還元的アミノ化反応が利用される。この反応を用いて調製されたオリゴ糖誘導体は、酸加水分解条件にも耐えうるほど化学的安定性が高い。したがって、現状ではこの標識基の影響が懸念されるような生物学的な研究に、液体クロマトグラフィーで分離した糖鎖が利用された例はほとんどない。われわれは、この還元的アミノ化反応で調製されたオリゴ糖を過酸化水素/酢酸溶液で処理すると、元のオリゴ糖に再生できること見出した(Anal.Biochem.に発表)。さらに、高速液体クロマトグラフィーで分離した糖類をオンラインで固相抽出し、吸着剤上で化学反応を行うことで、元のオリゴ糖への再生を目動化する条件を作成することを目的とする。すでに、オフライン条件で標準オリゴ糖を使っ実験では元のオリゴ糖への再生を確認した。今後は、実資料へと適用したい。
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