研究概要 |
本年度は、(1)ビタミンD1α位水酸化酵素(1αOHase)遺伝子欠損マウス(1αOHase^-/^-)の作出と表現型の解析を行い、1αOHase^-/^-とビタミンD受容体遺伝子欠損マウス(VDR^-/^-)のダブルノックアウトマウス[(1αOHase^-/^-)・(VDR^-/^-)]の作出準備を行った。(2)がん治療薬となる可能性の高いビタミンD誘導体の開発を目的として、2α位に官能基を導入したビタミンD誘導体について活性を評価した。(3)ビタミンD誘導体をがん治療薬として適用する際に問題となる高カルシウム(Ca)血症を惹起しない誘導体として、2α-Fluoro-19-nor-22-oxa-1α,25-dihydroxyvitamin D_3(2α-F-19-nor-22-oxa-1,25-D_3)を開発しがん治療効果を評価した。研究成果は以下のとおりである。(1)1αOHase^-/^-の作出と表現型の解析:F1ヘテロマウスを作出し、ヘテロマウス雌雄の交配により1αOHase^-/^-の作出に成功した。表現型の解析では、リアルタイムPCRにより1αOHase^-/^-では1αOHaseは発現していないこと、副甲状腺ホルモン(PTH)発現が亢進していること、Ca代謝調節関連タンパク質の発現が低下していることがわかった。また、骨形成・成長不全が認められ、特に背骨の湾曲や軟骨の過形成に伴う歩行不全の表現型を呈する個体も見出された。(1αOHase^-/^-)・(VDR^-/^-)マウスの作出に関しては、現在VDR^-/^-と1αOHase^-/^-の交配を開始している。(2)がん治療薬となる可能性の高いビタミンD誘導体の開発として、2α位に様々な鎖長の官能基を導入し、ビタミンD応答遺伝子に対する転写活性を評価した。その結果、2α位へhydroxypropyl基を導入することによりVDR結合性が高くなり高い活性を示すことがわかった。また、導入官能基の末端に水酸基を持つ場合の方が、血中ビタミンD輸送タンパク質(DBP)に対する結合性が高くなることがわかった。(3)ビタミンD誘導体をがん治療薬として適用する際に問題となる高Ca血症の発症を防ぐ新規誘導体として、2α-F-19-nor-22-oxa-1,25-D_3を開発し、標的遺伝子に対する転写活性、Ca代謝調節作用、GFP発現転移性マウス肺癌細胞(LLC-GFP)を移入した野生型およびVDR^-/^-マウスにおける腫瘍形成抑制作用の評価を行った。その結果、高用量投与によっても高Ca血症を惹起することなく、LLC-GFPによる腫瘍形成を著明に抑制する作用を有することを明らかにした。
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