研究概要 |
平成18年度から平成19年度にかけて、活性型ビタミンDの生成の鍵酵素であるビタミンD1位水酸化酵素(1α-OHase)の欠損マウス(1α-OHase-/-)を作出し、安定した表現型を示す系統を樹立した。表現型解析を行った結果、ビタミンD受容体遺伝子欠損マウス(VDR-/-)と同様に、成長不全・軟骨の肥大化・低Ca血症・高PTH血症・骨形成不全であることが明らかとなった。この表現型異常の大半は低Ca血症が主要因であるため、Ca補給飼育を行った結果、ほぼ完全に表現型が回復した。そこで、高Ca含有飼料にてこれらのマウスを飼育し、交配によりダブルノックアウトマウスの作出を現在試みている。ダブルノックアウトマウスが作出できれば完全なビタミンD不応性個やため、外的に移入する癌細胞に対する投与したビタミンD誘導体の抗腫瘍作用を解明することが可能となる。また、平成19年度には、細胞レベルでVDRノックダウン細胞を樹立し、骨形成におけるビタミンDの作用がVDR依存的なものあるいはリガンド依存的なものの両方があることが明らかとなった。特に、VDRをノックダウンした骨芽細胞の方が細胞増殖や分化が亢進したことから、骨芽細胞の増殖・分化にはVDRがネガティブレギュレーターとして機能していることがわかった。このような作用は、骨芽細胞だけでなく癌細胞においても認められる可能性が高く、現在癌細胞においてもVDRノックダウンによる効果を解析している。また、新規ビタミンD誘導体として、in vivoにおける副作用となるCa代謝調節作用を極力低下させる構造モチーフを持つ2α-Fluoro-19-nor-22-oxa-1α,25-D_3(2αF-22O-1,25-D_3)を開発した。In vivoにおける腫瘍形成抑制作用をGFP標識肺癌細胞であるLLC・GFP細胞を移入した野生型(WT)およびVDR-/-マウスを用いて評価した結果、2αF-22O-1,25-D_3を投与することで投与量依存的に腫瘍形成が抑制され、血管新生も有意に抑制されることがわかった。また、この作用は宿主にVDRが欠損している場合にも認められたことから、2αF-22O-1,25-D_3の抗腫瘍作用が宿主側でのCa代謝調節作用などを介さずに、癌細胞に対して直接起こる作用であることが明らかとなった。以上より、本研究によってビタミンD誘導体の癌治療効果を解析できる評価系を構築し、副作用無く癌細胞の増殖や転移を抑制できる非常に有効性の高いビタミンD誘導体を開発することに成功した。
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