研究概要 |
Crxはotd/Otxボメオボックス遺伝子ファミリーに属する転写因子であり、変異マウスの解析結果からCrxが視細胞分化を決定づける因子であると考えられている。また、ヒトCrxの変異は失明を引き起こすいくつかの網膜疾患の原因であることが明らかとなっている。申請者らは以前Crxの発現が視細胞運命決定因子であるOtx2により制御されていることを明らかにした。 CrxとOtx2は共通のDNA配列を認識する転写因子である。我々はCrxとOtx2の協同作用の解析を行う目的で、CrxとOtx2ノックマウスを掛け合わせ、 Crx-/-;Otx2+/-マウスを解析することによりOtx2が視細胞の運命決定だけではなく成熟にも関わることを明らかにした。また双極細胞特異的にOtx2を欠損するマウスを作成し、Otx2は網膜双極細胞の成熟にも関わることを明らかにし、報告した。(Koike, et. al.,2007) さらにOtx2の発現は中枢神経系に広範囲であるにもかかわらず、Crxの発現は視細胞、松果体に限局していることから、Otx2以外のCrx発現の制御メカニズム解析を行った。Crxのプロモーター解析より、Otx2結合配列とは異なるCrxの視細胞特異的発現を誘導する14bpの配列(CUE配列)をCrx遺伝子上流近傍より同定した。CUE配列を変異させたCrx変異プロモーターの下流にLacZレポーター遺伝子を組み込んだトランスジェニックマウスを解析した結果、完全なCrxプロモーターによる制御下ではLacZの発現が網膜視細胞および松果体に限局しているのに対し、CUE配列変異プロモーターでは網膜視細胞および松果体でのLacZの発現が消失したことから、CUE配列はCrx発現に必要な配列であることを明らかにした(論文投稿準備中)。
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